【本の要約とレビュー】もっと言ってはいけない(橘玲)
1.この本について
この本は冒頭であるように「読んだ人を不快にさせる本」と記載されています。なぜならこの社会においては遺伝によってほとんどの事象が説明できてしまうからです。
知能、精神疾患、犯罪…これらは遺伝によるところが大きい。しかもその根拠を統計的事実を以って説明されてしまうので、読んだ人は「結局人生親かよ!?」という、努力なんて報われないという気分にさせられるからです。
しかし、私は失望しませんでした。むしろ希望を持ちました。
遺伝によって身体的特徴も性格も親に似てきてしまうということは逆に考えれば…
2.本の要約
⓪(注意事項)この本のよくある誤解について
この本で記載している内容はあくまで統計的事実であって、定義でも一般化しているわけでもない。
よくある不毛な指摘として「親が高卒でも東大に入った人がいる」だとか「医者の子供は中卒だ」だからこの本はでたらめだ!というしょうもないインターネットのレビューについては、一蹴している。
また、行動遺伝学で知能が遺伝するという知見はあるが、「知能は遺伝で決まる」という一般化をしているわけでもない。あくまでも統計的事実であって、当然例外もあるということを最初に記載している。
①人格の構成と平等な社会について
この本では人格の構成を下記のように仮定している。
人格=遺伝+環境( 共有環境 ー 非共有環境 )
環境とはいわゆる「育ち」のことで、共有環境とは「子育て」、非共有環境とは「友達関係」を意味する。
この公式の残念なところは共有環境、つまり「子育て」がほとんどの領域で寄与度が小さいことである。
さらに残念なことに平等な教育がもたらすものはより遺伝が人格を形成する重要な要因になるという事実である(ノルウェーの双子のデータを用いられて検証されているが割愛する)。
②年齢とともに遺伝率は上がる
簡単に言うと「年を重ねるごとに親に似てくる」ということである。
遺伝による知能への影響は幼児期が40%、青年期で50%、成人初期で70%とだんだん親に似てきてしまう。
これも実験の結果から明らかになったことだが、身近な例として、受験期に遊んでばかりいた子が突然成績優秀になり、勉強していたはずの子を追い抜いていく現象は、遊んでばかりいた子の親の遺伝が開花した結果なのだと説明されている。
3.この本の活用法!
この本には我々がどう思考していけばいいのか、どう行動していけばいいのか、という問題解決について具体的には記載されていません。
遺伝の影響が強いという事実を受け止め、前向きに考えていかなければならないということです。以前の記事で紹介したように思考が人生を決めるものですから、思考に影響を与えている遺伝を知ることは大変重要です。
ジェームズ・アレンの原因と結果の法則のレビュー↓
①自分の両親で自己分析ができる!
自分の両親の良いところと悪いところを客観的に比較して、今の自分の環境や、これからの環境を考えていくことで、得意なところや才能を活かす場所を探していけるかもしれません。自分の両親を客観的に見るのは自分を見つめ直すよりもたぶん簡単でしょう!
これは完全に個人的な話ですが、私の場合、両親は「親しみやすさ」という強みがあります。誰からもあまり警戒されず、すぐに打ち解け、仲良くなっているという特徴があります。
また、「人が嫌がることを率先してやる」というのも両親の特徴でした。父親は誰もやりたがらないPTAの会長をやっていたし、母親は介護士でした。
献身的な行動で感謝されることに喜びを感じる人格に、私自身もなっている実感があります。
②遺伝との闘いを意識して何倍も努力!
もちろん良いところだけなく悪いところも遺伝されます。実は私の両親はどちらも「わりとテキトー」です(笑)
これは大きな弱点ですし、間違いなく負の遺伝としか言いようがありません。
しかしだからこそこの負の遺伝の存在を利用して己を律していくことができるのではないでしょうか。うちの両親はテキトーで、自分もテキトーだから、何倍も努力しなきゃいかん!となるわけです。
③非共有環境を変える!
非共有環境(友達関係)が人格を形成するうえで、唯一遺伝に対抗できる手段です。
自分が目指す目標に近づいている人や達成している人に物理的に近づくことで、非共有環境を変えましょう。
私が某国家試験に受かったときはこの方法を用いていました。成績が良い人たちとスクラムを組んで勉強に励みました。結果的に合格することができました。
*何の試験だったのかは追々お話します…
4.この本の総括
この本に不快なことは書いていませんでした。むしろ生きていくうえで重要な問題を発見し、その原因まで論理的に記述している素晴らしい本でした。
しかし、この問題に対して具体的な解決策は提示されていないので、そこは別の本や誰かに学ぶのが良いと思います。
以上