【本の要約とレビュー】上級国民/下級国民(橘玲)
1.結論~知能格差こそが上級国民と下級国民の分断の正体
本書の結論では知識社会においては、知能の高い人間が優位な立場になるので、経済格差とは知能格差のことを意味している。
そのため教育は格差拡大装置として、学ばない人間が下級になることを自己責任であるとしている。
ただしこの本では上級国民と下級国民を定義していないので、各章を読み、読み手が定義していく必要がある。
2.本の要約
①令和で日本で起きること
まず、平成30年間を振り返り、令和がどんな時代になるのかを予測している。
日本の社会構造、政策、報道に関して、人口統計や労働市場の変化を用いて、日本が団塊世代を中心に動いていることが明確に理解できる内容となっている。
統計的データを用いて、バブル崩壊後も団塊世代の雇用は守られ、その代わり団塊ジュニアの雇用は犠牲にされたことを明確に示している。
当然それらは報道などされなかった。なぜなら報道機関で働いている人もこの世代だから、自分たちが既得権益を守っていることにはフォーカスせず、今の若者が怠けているのだとニートというワードにフォーカスして視線を逸らしていた。
そして、団塊世代が選挙における票田であることから、令和は団塊世代の社会保障をするための時代になることが予想されている。
具体的にはじわじわと社会保障費や税金が上がっていく社会が20年続くというハードなシナリオである。
その先に待っているのはもっと貧乏くさい日本という国である。
②モテと非モテの分断
ここでは教育格差が経済格差につながり、さらにモテと非モテの分断にもつながることを示している。
学ばなかったことによって中卒や高卒になった人たちはアンダークラス(下流)になるが、これは教育が本質的に格差を生むことを示している。
*教育格差と聞くと教育を受けたくても受けれないという人がいるという問題を扱っているように聞こえるが、この本ではそうではなく、あくまで自己責任で教育を受けることを放棄している人を扱っている。
先史時代から男の性淘汰が社会での高い階級になることと女性にモテることが一致するが、女性の場合は階級を気にしないという例外もあるものの、年収の少ない男性が結婚できないことを統計的なデータで明らかにしている。
また、生涯未婚率が男性が23%であるのに対して女性が14%である理由を「一人の男性が離婚と結婚を繰り返し、複数の女性と結婚していること」を主張し、現代は一夫一妻制であるが、事実上は一夫多妻制であるといっている。
③世界の分断
知識社会、リベラル化、グローバル化が三位一体であり、主にアメリカで起きている分断について記載している。
分断をもたらす根幹にあるものは現在の知識社会に適応した知能を持つかどうかである。
現在右傾化した政権が目立つように見えるのはこのリベラル化への反動として捉えることができる。
④どう生きればいいのか?2つの戦略
1つ目の戦略は「高度化する知識社会に最適化した人的資本を形成する戦略」で、エンジニアやデータサイエンティストになるということを記述している。
2つ目の戦略は「評判資本」のマネタイズしていく戦略で、SNSのインフルエンサーやYouTuberになることを記述している。
3.レビュー
ずいぶん暗い内容が書かれている本ですが、格差や社会構造について学びたいという人にはお勧めできる本だと思います。
最後のあとがきの部分でまさかのSNSのインフルエンサーやYouTuberがこの知識社会を生きる戦略の1つに入っていることに驚きました。自分の戦略は間違っていないと確信することができて本当に良かったです(笑)
以上